コックピットに押し込められ、銃を突きつけられながらキーボードに指を走らせながら、
それを見上げるガルシアと、銃を突きつけられ佇むを、キラはちらりと盗み見る。

コーディネイターでさえ、途切れ途切れにしか聞こえてこない距離の会話。

ただ、が不快を感じていることは確かだった





嘆きの振動






「君がどういう経緯でこれと共に現れたかは知らんが、こちらとしてはこの上なくありがたいことだよ。」

ガルシアが自分に向けたように、あの嫌な笑みを浮かべるのが見て取れ、キラは唇を噛み締める。

「やはり、コチラの生活が恋しくなったのかな?」

は男の声を無視するかのように、弾かれた様に辺りを見回す。
それと、ほぼ同時に、キラに何かの衝撃音が耳に届き、辺りがざわめき出す。

「管制室、この振動はなんだ!?」
『不明です!周辺に機影なし!!』

ガルシアが慌てて声を張り上げるが、まともな答えは返って来ない。

「だがこれは爆発だぞ!!」

再度起きる振動に、地面が揺れがガクリと膝を付いた。

『防御エリア内にモビルスーツ!?』
「なんだと!?」

驚愕に震えた声が響き渡り、兵士達が目を見開く。

絶対と信じていたモノの崩壊・・・

ふと、キラはが自分を見上げているのに気が付き、大きく頷くと、自分に銃を向けている兵士を蹴り飛ばしハッチを閉める。

!!」

キラはストライクの手をに伸ばすと、はそこに飛び乗る。

「キラさん!」

コックピットを開けると、が滑り込みシートの後ろに回る。

「貴様ッ!?」

下から怒声を上げる男に、キラがスピーカー越しに怒鳴り返す。

『攻撃されてるんでしょ!こんなことしている場合ですか!!』

男達を蹴散らすかのようにストライクは前進し、カタパルトデッキへと移動すると、ソードを装備し飛び立った。





『今日こそ!!』

「こんなところまで・・・!?」

キラは向かってくるブリッツに一人呟く。

先程のガルシアの言葉が頭の中をグルグルと回り、心が軋み悲鳴を上げる。

「くそぉ・・・もう、僕達を放っておいてくれぇ!!」

ブリッツから放たれたランサーダートを、大きく振り被ったシュベルトゲベールで切り裂き、ブリッツに切りかかる。

隣のがキラの叫びに大きく目を見開くと、は咄嗟に操縦桿に手を伸ばしていた。

「キラさん、後ろへ。」
「え?」

の言葉にキラが目を丸くすると、はストライクの操縦桿を勢い良く押し上げる。

?」

驚きの声を上げるキラを突き飛ばすかのように、シートを奪うと、一気にバーニアを吹かし込み、基地を襲う黒いモビルスーツへと突進していく。

「うわっ!?」

思わずよろけるキラをちらりと視界に入れると、は目前を睨みすえた。
キラは頬を染めシートに噛り付くと、は前を見詰めながら口を開く。

「言いましたでしょう・・・不快だった・・・と。」
「?」

意味が分からず首を傾げるキラに、は答えるでもなくブリッツに体当たりをして動きを止める。

キラは、の言葉の意味を理解することも忘れ、ただ、鮮やかな手付きでストライクを操縦するの手に魅入っていた。

ナチュラルだといった・・・

コーディネイターの自分に勝るとも劣らない手付き

地球軍のを見る目付き


君は・・・何?


だが、それを聞いたらきっと間違いなくは、不快な顔で自分を見るのだろう。

それとも、はっきりと「貴方には関係ありません」と言われてしまうかもしれない。


『キラ?キラ、戻って!』


ブリッジから入ったミリアリアの声にキラがを見ると、も頷く。

「了解しました。」
『え?・・・?』

驚いたミリアリアの声に、が小さく微笑んだ気がした・・・

戻ろうと反転するストライクに、体制を建て直し襲い掛かってきたブリッツ。

『くっ、逃げるのか!!』

爆炎がブリッツの行く手を遮り、の操縦するストライクは発進したアークエンジェルの艦上に着艦する。

『ストライク、着艦!』
『アークエンジェル、発進!最大艦速!!』

アルテミスから逃れると、遠くに爆発が上がった。

キラがまるで耳を塞ぐかのように顔を顰めるので、は何も言わず目を伏せた。










「坊主!嬢ちゃん!」

格納庫に戻ったキラとがコックピットから滑り出ると、フラガが賞賛するかのように声を掛けるが、キラはその前を逃げるようにすり抜けていく。

「ありゃ、どうしたんだ?」
「ん?」

首を傾げるフラガとマードックの横を、がキラと同じ様にすり抜けようとすると、フラガが慌ててを止める。

「何です?」
「君こそ。そこまで嫌わなくてもよくないか?」

自分達に対する態度に微かに嫌悪を滲ませるに、フラガが困ったように顔を顰めると、の深緑の瞳に鋭い物が走り、それが『怒り』だとフラガは咄嗟に察した。

「・・・」

そっと肩から手を離すと、そのまま何事もなかったかのように去って行くその背を見送ると、不思議そうにじっとこちらを見上げてくるマードックに、フラガは苦笑を浮かべ両手を挙げて見せた。





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あとがき
ザフト編は地球降下ちょっと前からになります。
2004/11/2