「あとどれ位で到着ですか?」
「あと一時間ほどで到着します!」
の質問に、敬礼で返す地球軍兵
が通り過ぎると、敬礼を送った男達に、「誰だ?」と訝しげに訊ねる他の兵士
「馬鹿、しらねぇの?・だよ、俺たちの勝利の女神様だってさ。」
「あんな子供が?」
「子供だけど、本物の天才様だよ、コーディネイターなんか偽物とは違う、本物のな?」
「あの人に任せときゃ、一発で化け物共を殺せるような武器、作ってくれるんじゃねぇの?」
「天才様様だな!」
ドッと湧き上がる笑い声に、は振り返る事無く顔を顰めた。
不一致
「どうです?」
「ぁあ?最高だぜ!」
の言葉に口端を吊り上げるオルガ
カラミティのラダーが下がりきる前に飛び降り、黙々と資料と睨めっこをしているへと歩み寄った。
「そうですか。」
「何、お前・・・機嫌悪いのか?」
上機嫌のオルガがの顔を覗き込むと、は微かに驚いたようにオルガを見上げた。
「何故分かるんです?」
「そりゃぁ・・・なんでだ?」
困ったように頬をかくオルガに、は不服そうに顔を顰める。
「なんです、それ。」
「んなこと言ったって、機嫌が悪そうだと思ったからそう聞いたんだ!うぜぇな。」
オルガの言葉に、がピクリと眉を吊り上げると、「しまった」といった面持ちで顔を引き攣らせるオルガ
「誰が、カラミティの性能アップさせたと思ってるんです?休みも疎かに!これで、機体の何処かを壊して帰ってみなさい、ゆる・・・」
はそこまで捲くし立て、口を紡ぐ。
すると、訝しげに見下ろしてくるオルガの肩をポンと叩き、は小さく苦笑を浮かべた。
「いえ・・・無事に帰ってきてくださるなら、それ以上の贅沢は・・・ありませんよね?」
「なんだよ、気持ち悪ぃな・・・熱でもあんじゃねぇの?」
顔を顰めたオルガが、の前髪を掻きあげ、コツリと額を重ねる。
が瞬きをすると、の睫がオルガの肌に触れた。
深緑の瞳に間近で自分の瞳を覗き込み、オルガか暫し魅入るように当初の目的を忘れ、深緑の瞳を凝視する。
「・・・あります?熱。」
そんなオルガに、表情を変える事無く訊ねるに、オルガはハッと弾かれたように飛び退く。
「・・・なっ、そっ、へ、変なつもりでやったんじゃねぇぞ!いや、その変って。あ゛ぁ、ちげぇ!!?」
そのまま、真っ赤な顔で逃げ出そうとするオルガ
は顔を顰め、オルガの腕を掴む。
「どうなさったんですか、急に・・・。オルガさんの方が熱があるのでは?あと一時間で到着するんですよ?大丈夫ですか?」
「てっ、てめぇには関係ねぇだろ!」
慌てて、夢中になりながらの手を振り払うと、の手にしていたカルテがコツリとオルガを小突く。
「そういうコト言っちゃ、駄目です。それは人を傷付ける言葉です・・・」
強いのだか弱いのだが良く分からない瞳が、真っ直ぐと自分を見上げてくる。
それに居た堪れなく、オルガが眉間に皺を寄せたまま顔を逸らせば、が小さく溜め息を漏らした。
「オルガさんだって、私の心配をしてくれたじゃないですか・・・。私だってオルガさんが心配なんです・・・。」
の言葉に、オルガはムッと顔を顰めた。
「てめぇが心配なのは、俺じゃなくってカラミティだろ?それとも、サンプルの俺に何かあったらまた金が掛かるってか?」
一気に捲くし立てれば、今度は手加減なしに顔面に叩きつけられるカルテ
「いってぇ!?てめっ、ちょっとは手加減ってもんを・・・!」
「私・・・傷付きました・・・。」
ムスッとした面持ちで、が言葉を放つ。
オルガは、顔を抑えたまま、そんなを見下ろし・・・
「てめぇ・・・何処が傷付いた顔だよ・・・。」
思わず本音を漏らす。
すると、は小さくくすくすと笑い出した。
「凄いですね。何故、オルガさんには分かっちゃうんでしょうか?」
「てめぇ・・・おちょくってやがんのか?」
顔を引き攣らせるオルガ
から次第に笑みが引き、真っ直ぐと深緑の瞳がオルガを捉える。
「言葉も表情も、一致しないんですよ、この世界は。」
「は?」
「それでも、私を分かってくれる方がいるのは嬉しいですね?例えオルガさんでも。」
再びくすくすとから漏れる笑い声に、固まっていたオルガがプルプルと肩を震わせ・・・
「てめぇ・・・やっぱり、俺をおちょくって遊んでんだろ・・・。」
「人聞きの悪い。交友を深めていると言って下さい。」
悪びれた様子も無く、悪戯に意地の悪い笑みを浮かべる
『総員、第二戦闘配備!主任は、至急ブリッチまでお越し下さい。』
その時、艦内に響き渡る声に、は溜め息を漏らす。
「お仕事です。」
そう呟きオルガに背を向けたが、何かを躊躇うように振り返り、不安げに揺れる瞳をオルガに向ける。
「・・・・・」
互いに何かを言い掛け・・・そして口篭り・・・
「私は・・・待っていますから。」
何処か悲しそうに向けられる微笑
「ですから・・・どうか、自分に負けないで?そして、這い上がってきてください・・・皆さんで。」
ふわりと白衣が舞い、遠ざかる足音に、オルガは顔を伏せたまま拳を握り締める。
その意味が分からなければ・・・良かったのだろうか?
それとも、分かることが救いなのか・・・?
もとより、なぜ、こんな言葉に自分の心が揺れているのか・・・
慌しく動き出す緊張感に溢れた艦内で、オルガは踵を返し、歩き出した・・・
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あとがき
2005/3/13