なんとかザフトの追撃を逃れたアークエンジェルは、アルテミスに入航した途端に銃を向けられた。

「・・・・・。」

食堂に集められた一同は、我が物顔で入ってきた地球軍の兵達に顔を顰める・・・






世界の定義






「あぁっ・・・いっ・・・!?」
「ミリアリア!?」

強引にミリアリアの腕を捻じり上げた地球軍の士官に、キラが目を見開く。

「女性がパイロットと言う事もないと思うが、この艦は艦長も女性と言うことだしな・・・」
「いったぁい!!?」

激高したキラが、マードックの制止を振り切り立ち上がった。

「止めてください、卑怯な!」
「坊主!?」

マードックが慌てて止めようとするが、キラは尚も声を張り上げる。

「あれに乗ってるのは僕ですよ!!」

キラの言葉に、マードックは頭を抱える。

は静かに隣で立ち上がったままのキラを見上げ、ガルシアに視線を戻す。

「坊主、彼女を庇おうという心意気は買うが、あれは貴様のようなヒヨっ子が扱える物じゃないだろ!」

ふっと、馬鹿にした笑みを浮かべたガルシアは、途端に怒りを浮かべ声を張げ、キラに殴りかかる。

「ふざけたことをするなぁ!?」
「僕はあなたに殴られる筋合いはないですよ!」

キラは、唐突に殴りかかられたにも関わらず、あっさりと拳を交わし、逆に男を地面に叩きつけた。

「司令!?」

慌てて部下が駆けつけてくるが、怒りを浮かべたキラは振り返り睨み返す。



勝手にこんな戦争に巻き込んだ挙句、さらに、内情のゴタゴタにまで・・・

善意で艦の仕事を手伝ったミリアリア達を、ましてや女の子を人質に聞きだすその行為

酷く腹が立つ

同時に冷静な自分が、もっと騒げと囁く

そして、もパイロットだということを隠せと告げる声に、キラは忠実に応える。



「なんなんですか、あなた達は!!」
「キラ、やめろ!抵抗するな!?」

マードックが慌てて止めるが、キラは収まらない。

は椅子に座ったままその光景をぼぅっと見ていた。

体中を何かが駆け巡りじりじりと焦がす。

収まらない苛々

そんなモノを感じたのは久しぶりだった。

「きっさまぁ!!?」

地球軍の兵士がキラの胸倉を掴み拳を振り上げた。

「止めてください!!」

それをサイが慌てて止めに入ると、その拳はサイを殴りつけ、フレイが倒れたサイを抱きとめ悲鳴を上げた。

は無意識に立ち上がる。

あの何も映さない瞳が微かにゆれ、薄く開かれた唇が微かに震える。

「・・・?」

驚いて誰かが自分を呼んだが、が止めるでもなくただ立ち尽くすその隣で、フレイが金切り声を上げる。

「ちょっと、止めてよ!!キラが言っていることは本当よ!?その子がパイロットよ!!」
「フレイ!!」

トールが咎めるように名前を呼ぶが、フレイは更に捲し立てる。

「貴様、いい加減にしないか!!」

「嘘じゃないわよ?だって、その子、コーディネイターだもの!!」

その言葉に場の空気が凍りつく。

気丈に睨み返してくる幼い少年。

これが、敵の化け物・・・?



まるで罪人の様に連行されていくキラは、と一度も目を合わせようとしない。

は、満足気なガルシアの下に歩み寄ると、あの何も映さない瞳に、その嫌な笑みを映した。

「・・・なんだ?」

じっと見上げられ、顔を顰めたガルシアには口を開く。

「私もパイロットです・・・」

小さく呟いた声に、キラが勢い良く振り返る。

・・・といえば、伝わりますでしょうか?」

相変わらずの無表情で首を傾げるに、ガルシアは大きく目を見開き、次の瞬間には高々と笑い声を上げた。

その様に、驚きに目を見開いていたキラが顔に嫌悪を浮かべた。

少なからず、協力などしたくないと思っているが、名乗り出た。

何故?

なら、話を振られない限り絶対に名乗り出ないと思っていただけに、キラは顔を顰める。

「なんで・・・、僕だけで十分だったのに・・・」

隣に並んで歩き出したに、キラが小声で囁くとは隣のキラに視線を向けたが、それは目を合わせるために首を上げもしない。

「・・・なんだか、不愉快・・・でした。」
「え・・・?」

小さく呟かれた言葉

向けられた視線は、目を合わせることを拒むように、の目線であるキラの肩の位置

「・・・。」

そんなをじっと見下ろしていれば、突然視線を上げたと目が合い、キラは真っ赤になって顔を逸らした。

もそんなキラから視線を逸らすと、ぎゅうぎゅうだったエレーベータのドアが開き格納庫に辿り着く。


「OSのロックを外せばいいんですか?」

悠々と聳え立つストライクの前で、キラが訊ねると、ガルシアは嫌な笑みを浮かべる。

「まずはな・・・。だが、君にはもっといろいろな事が出来るんだろ?」
「何がです・・・?」

「例えば、こいつの構造を解析し、同じモノを作るとか、逆に、こういったモビルスーツに対して有効な兵器を作るとかね?」

その言葉は、キラの怒りを更に煽る。

「僕は唯の民間人で、学生です!軍人でもなければ軍属でもない!!そんな事をしなければならない理由がありません!?」

キラの怒声を物ともせず、ガルシアは笑みを深める。

「だが、君は裏切り者のコーディネイターだろ?」

キラの脳裏を幼い友人が過ぎる

「っ・・・裏切り者・・・?」

呟いたキラに、ガルシアはしたり顔で続ける。

「どんな理由かは知らないが、どうせ同胞を裏切った身だろ。ならばいろいろと・・・」
「違う!?僕は・・・っ!!」

必死に己の中で否定しようとするキラはガルシアの言葉を遮るように叫ぶ。
は横目でキラを見る。

「そして・・・」

そしてぽつりと漏らす言葉に、一同の視線が少女へと向けられる。

「そして、出世の道具に利用されるおつもりですか?」

・・・?」

あの無表情に刻まれた嫌悪にキラが目を見開く

「彼が今までどんな思いでこれに乗ったかも知らず、裏切り者と、そうおっしゃるのですか?」

その言葉にガルシアの口の端が釣りあがる。

「それが、現実だろう?現に、ここまでの道中、彼は同胞を殺してきたのではないのかね?」

キラの瞳が大きく揺れた。は眉間の皺を深めガルシアを睨み付ける。

「君とコーディネイターが力を合わせれば、我々の勝利も確実となるだろう。」

後ろに控える副官にちらりと視線を向ければ、彼等はガルシアと共にくつくつと笑い出す。

は無意識に拳を握り締めていた。

「地球軍側につくコーディネイターというのは貴重だよ?何も心配することはない、君は優遇されるさ・・・ユーラシアでもな?」


おかしい・・・

あまりにも偶然が重なり、絡み合い、気が付けば、身動きが取れないほど縛り付けられていた。


顔を伏せ、怒りを、悲しみを、苦しみを必死で抑えようと、一人震えるキラに、は目を細める。


彼は、ひとりだ・・・

私と似ているようで、似ていない


もう、何もない、どうでもいい自分とは違う

だが・・・

悲しいほど重なるものを感じ、は居た溜まれず目を逸らした





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あとがき
副官のひょろ長くて、おかしな髪型のおっさんから目が離せないのは私だけでしょうか・・・
2004/10/30